Category: 知られざるブラックカルチャー
黒人女性の所有欲
黒人男性と付き合ったり結婚した事のある、アメリカ在住の「黒人でない女性」ならば、絶対に気づく「視線」というものがある。それは、黒人女性たちからの、冷たい視線。
イギリスやフランスだって黒人が多い社会だが、これはアメリカ特有のものだと思う。
それは、「アメリカの黒人女性」というものが、とても特徴的だから。
アメリカの黒人女性は、「黒人男性は自分たちの男」という意識が強い。自分の恋人や夫でなくても、黒人男性が非黒人女性と一緒に居るのをすごく嫌う。「我々の男が取られた」と、面白くない気分になるのだ。若い女性も年配の女性も。まるで「盗人扱い」の視線で、睨む人も居る。
冷たい視線を浴びるのは、黒人男性と一緒に居る非黒人女性たちだけではない。黒人女性を相手に選ばない黒人男性なんて、「黒人失格」のレッテルさえ黒人女性に貼られる。
こういうジョークがある。。。。黒人以外のガールフレンドと歩いている黒人男性は、道で黒人女性とすれ違う時に、いきなりつないでいる手を離す、とか(笑)
「この白人(アジア人)女性とはなんも関係ないよ」といった風に、他人のふりを始める。映画なんかでは大げさに演出されたりするけれど、ジョークではなくて実生活の中でもこううする黒人男性は多いらしい。
私は、夫に手をふりほどかれた経験は無いけれど、「あ、やばい。向こうからブラックウーマンが歩いて来る!」なんて事は冗談で言ったりする。
黒人俳優のウェスリー・スナイプスは、一時期セックスシンボルとして、黒人女性に大人気であった。
しかし、彼が韓国系女性と付き合っていると知られた時に、黒人女性たちからさんざん叩かれた。数年後にその女性と結婚した時には、長年ファンだった黒人女性たちは一斉に「敵」にまわった。彼の人気は急降格。
それ以来、人気商売の黒人男優やスターたちは、デート相手の人種にまで神経を使うようになった。黒人女性を敵に回すと、怖いのだ。
タイガー・ウッズは黒人男性にとっては英雄であるが、黒人女性はとやかく言う人が多い。
最近離婚したが、彼の白人の元妻が理由である。彼の浮気騒動について「最低」と言う人より、「白人女性と結婚するなんて、黒人男性として最低」という人の方が圧倒的に多い。
こういう黒人女性の言い草を、黒人男性はいつも呆れて聞いている。
オバマ大統領は、ミシェル夫人という黒人女性が配偶者でなかったら、世間の黒人女性サポーターもあんなに熱狂的でなかったであろう。
白人女性の母親を持ち、白人の環境で教育を受け、白人が多い職場で生きて来たオバマが、白人女性と結婚していたら、「白人みたいな黒人」と逆に嫌う黒人女性が多かったはず。白人の環境で育った、ブラックらしからぬ黒人男性だけど、「黒人の妻を選んだ」という事がポイント高いのである。黒人女性たちのプライドを、大いにくすぐった。
アメリカで一番、「異人種間の付き合い」に保守的なのは、この黒人女性たちである。黒人男性は、他人種と自由に付き合い結婚することも多いのに。
何故、黒人女性だけは、自分たちの「人種」の壁を越えようとしないのか?
それは、歴史的、社会的な背景も大きな原因にある。アメリカの歴史の中で、黒人は長い間虐げられて来たが、その中でも女性は二重に差別を受けた。
人種差別に女性差別。人種問題に扉が開いたときでも、女性に対する世間の扉はまだオープンでなかった。
社会的に、信頼もサポートも受けられない、黒人女性たちの鬱憤。
異人種を信用しない、好意的に受け入れない傾向は、そういう歴史に原因がある。彼女たちが頼れるのは黒人男性のみ、と固く信じている。異人種は自分たちを守ってくれない。そんな気持ちが異常に強いので、「自分たちの男」を異人種の女性に取られるのは我慢ならないのである。
黒人男性にとって、異人種のガールフレンドや婚約者を初めて家族に紹介する時は、最初の関門である。男性陣は歓迎してくれるが、怖いのは自分の母親を始め姉妹、伯母や従姉妹たちの反応。いい顔をするはずがないのである。時代は21世紀なんだし、表向き「笑顔」を見せても、心の中では「息子には黒人女性と付き合ってほしい」という本音は必ずある。
高校生の頃から、あらゆる人種のガールフレンドを家族に紹介してきたという夫。大学生の時、かなり性格に問題のある黒人女性とデートしていたらしい。しかし、お母さんはすごく彼女のことが気に入り、「結婚しなさい!」と大いに勧めた。
なんのことはない。 理由は「彼女が黒人だった」からである。その前に連れて来た女性が白人だったので、お母さんは気をもんでいただけなのだ。
どんなに性格が良くて美人でも、白人やラティーノやアジア系だとお母さんは冷たい。一方どんなにクレイジーでインテリとは言えなくても、黒人女性だとお母さんは嬉しそうな顔をするらしかった。
夫は母親の事を心から愛している。だが、そういう黒人家庭にありがちな不条理に、落胆もしていた。
夫の随分年上の従兄弟ケヴァンは、10代の頃から徹底して白人女性としか付き合わない。毎回ディナーに連れて来る女性は違うのであるが、必ず白人女性である。これは好みでもあるのであるが、黒人女性が嫌いな理由、付き合いたくない理由が、ケヴァンの中にあるのだと思う。
人種に関していちいちヒステリックな反応をする黒人女性というのは、そういう物から根っから解放されている自由人ミュージシャンのケヴァンにとっては、最初から興味の対象ではないのであろう。
「勇気ある」ケヴァンのおかげで、次のジェネレーションには大きく扉が開いたのは事実。彼が前例を作ってくれたからこそ、私の夫だって黒人以外のガールフレンドをファミリーディナーに連れてくる事が可能だったのだ。ケヴァンが白人女性と結婚して子供も作った前例があったからこそ、夫だって私と結婚する事に苦労もしなかったのだ。
義理両親は、出会った当初からすごく私に親切にしてくれる。ご無沙汰すると、義理パパは用事を作って私の顔をわざわざ見に来る。その親切さや私への愛情は、上辺だけの物では無い事は、すごく感じる。
結婚する事を打ち明けたときの、彼らの喜びようといったらなかった。義理ママは涙ぐんで、私をハグした。だから、義理ママのそんな過去の話を聞くと信じられない。
「ママはすごく変わったんだよ」と夫。彼女も息子の行動と共に、考えを改め成長してきたのであろう。今でも本音はあるのであろうが、時代は変わって行かないといけないのである。
異人種間の結婚が自由な時代のアメリカでも、黒人女性と黒人以外の男性のカップルは大変珍しい。黒人女性は、余程仕事で社会的に異人種と関わっている人以外、黒人社会のみで生活するのを好む傾向がある。「自分は受け入れられない」という意識が、余計に彼女たちを保守的にさせる。彼女たちから壁を作るので、異人種がなかなか入って行けないムードもある。従って、白人やアジア系の男性が、黒人女性と個人的に親しくなるのも、限られている。
世代を超えて受け継がれるネガティブな保守性は、見ていて時にどうしようもないな、と思うときがある。狭い世界に閉じこもって、「異空間」に出る事を恐れ、出ても交わらず、結局同じ人種だけと関わる事を選ぶ人たち。そして、異人種と関わる黒人を好まず、その相手に嫌悪感を抱く。
全て、自信の無さと劣等感から来ている物ではないか。
60年代や70年代じゃないんだし、黒人と異人種が歩いていたって逮捕される訳ではない。
黒人の男性と一緒に歩いていて、我々の方をジロジロ見るのは、白人以外の人種を見た事のないような田舎に住む田舎者の白人アメリカ人か、都会で色んな人種を見慣れているはずの黒人女性だけである。
この2種の視線は、全く別の種類である。前者は、無知とか無教養から来る、物珍しい物を無礼に見る視線。後者は、嫌悪の視線。
私は人から愛されようと思うような人間ではないので、全然そういうのは気にしない。シカゴの日本人は元々少ないし、街のどこに行っても人種的に「浮く」存在なので、そういうのには慣れている。
シカゴの黒人男性の友人が、日本に数年滞在して、日本人のフィアンセを見つけた。彼も、日本人女性と結婚すれば、黒人女性からの刺さるような視線や態度を避けられない事を知っている。「親戚もなあ。。。従兄弟たちは問題無いけれど、従姉妹たちが冷たいだろうなあ。。。」と心配していた。
結局彼はフィアンセのために、日本人の多いカリフォルニアに新居を構える事にした。そこなら、黒人男性とアジア人女性のカップルも、シカゴよりはずっと多いからだ。確かに、英語も自由でなくアメリカ生活も初めての日本人の彼女にとっては、いきなり黒人女性たちからの視線の嵐はキツいと思う。
この黒人女性たちの態度と視線と批判に、黒人以外のパートナーを持つ世の黒人男性たちは非常に疲れている。
黒人女性だけと付き合っている時は見えない事だが、異人種に途端に牙を剥く同じ肌の色の女性の実態を知り、落胆し、ケヴァンのように黒人女性嫌いになる黒人男性も珍しくない。