Category: 知られざるブラックカルチャー
夫と暮らし始めた頃、アイスティーの作り方でも文化の違いを感じた。
彼はガラスの空き瓶に水を入れ、その中にティーバッグをいくつか入れる。そして夏場は、それを日向に数時間置いておくのである。確かに水出しでも、紅茶の色はどんどん出る。
それを「サンティー(sun tea)」と呼ぶ。南部文化から来ているらしい。
サンティーを作れるのは、シカゴでは夏場だけ。冬は日照時間も短いし、家の中に強い日も入らないから。
日向で水出しにするのはいいのだが、驚くのはその後だ。
それは砂糖の量。ハーフガロン(2リットル弱)の水に対して、約1.5パウンド(約700g)の砂糖をざーっとじょうごで流し込むのである!!
夫の作るサンティーは、悪いがとても飲めたものじゃない。歯が融けそうになる。
「そんな砂糖の量使ってたら、健康に良くないよ。甘すぎるって思わないの?」と聞くと、「ママから教えてもらった分量通りだ」とこともなげに言う。
買い物のたびに、砂糖の袋を買う。こちらの袋は標準サイズで5パウンド(2.27kg)ある。
それがどんどん無くなる。私だったら、1年かかって使う量を、1~2週間で使い切る。
いくらママのレシピだろうが、健康に良くない事は明らかだ。肉体労働してるわけじゃないんだし、そんな甘い飲み物を1日に何倍も飲んでどうする。
私は、夫と暮らし始めて数ヶ月後に、この毒のように甘いサンティーを止めさせた。
代わりに勧めたのは、日本の麦茶である。夫は「美味しい!」と気に入り、砂糖無しの麦茶をごくごく飲むようになった。
日本では、アイスティーは無糖のまま冷やしていた。家族であっても、無糖、加糖、砂糖の量だって人それぞれ違うからだ。
だが黒人家庭では、既に決められた砂糖の量の甘ーーーいアイスティーが冷蔵庫に入っているのである。甘さは、作る人によって勝手に決められてしまう。
義理ママの作るアイスティーは、非常に甘い。カルピスの原液をコップ半分くらい入れて薄めて作ったカルピスくらい、甘い。
最初の頃、無糖を想像してゴクンと飲んだ私は、吐き出してしまった。それ以降、義理ママのアイスティーは、内緒で水で薄めて飲むようになった。
義理ママのアイスティーだけが異常に甘いのかというとそれも違う。
黒人地域の黒人客しか居ないようなレストランで出て来るアイスティー、これも吐き出す程甘い。わざわざオーダーしたのに飲めずに無駄にした経験以来、私はソウルフードの店や黒人レストランに行った時は、水を飲むようにしている。
夫は子供の頃、哺乳瓶に入れられた砂糖水を飲まされていたという。まだ歯も生えない子供に、砂糖を大量に入れた水なんて!
これもブラックカルチャーなのだ。
南部のアイスティーがすごく甘いのと同じで、彼らは水にも砂糖を入れて飲むらしい。義理ママはシカゴ生まれであるが、彼女の両親は南部出身なので、その「郷土文化」を引きずっている。
黒人家庭を舞台にしたテレビドラマ、「Everybody hates Chris」というのがあった。
このシットカムは多少大げさに黒人家庭をおもしろおかしく描いているものの、黒人家庭にありがちなエピソードをポイント鋭くついて描写しており、毎回大笑いして観ていた。
80年代のNY、ブルックリン。シーンはディナーテーブル。10歳くらいの男の子が、ガラスコップに入った水に、何食わぬ顔で1杯、2杯、3杯、4杯とスプーン山盛りの砂糖を入れるのだ。
それ見て笑った。どこかで聞いた話がそのまんま(笑) NYとシカゴ、場所は変われど、こういうブラックカルチャーは同じ。
しかし昔は、子供は夏の暑い日でも、外でかけずり回って遊んでいたのだ。家の中のクーラーの中で、1日過ごす子供なんて居なかったのだ。クーラーが入っている家だって少なかったし、家の中だって夏は汗だくになるほど暑かったのだ。だとしたら、あの砂糖の量は分かる。流れる汗の量を考えると、甘いアイスティーを飲んでも、彼らが太っていなかったのも頷ける。
だが今は。。。。生活習慣がすっかり変ってしまったのに、飲み物に入れる砂糖の量だけは変らない。。。
アメリカの料理の砂糖の量は日本のそれと比較すると驚く程多いのであるが、アメリカの中でも黒人の味付け、好みの味はさらに甘いと言ってよい。
義理従兄弟の奥さんがケニア人で、彼女もアフリカの紅茶文化で育って来た。
彼女も、「このサザンスタイルスウィートティーは、喉が焼ける」と言って一切手をつけない。
ファミリーの中でアイスティーの甘さに関して異議を唱える人は、私と彼女だけ。。。そう、外国人の2人だけ。
彼女は「不健康この上ない」「美容面から」という理由で、パーティに出るフライドチキンにも、フライドキャットフィシュにも一切手をつけない。アメリカの揚げ物は、食べると気持ち悪くなるそうだ。
彼女も正真正銘のブラックではあるが、ソウルフードはアフリカンではなくて、本当にアメリカンブラックカルチャーなのである。
彼はガラスの空き瓶に水を入れ、その中にティーバッグをいくつか入れる。そして夏場は、それを日向に数時間置いておくのである。確かに水出しでも、紅茶の色はどんどん出る。
それを「サンティー(sun tea)」と呼ぶ。南部文化から来ているらしい。
サンティーを作れるのは、シカゴでは夏場だけ。冬は日照時間も短いし、家の中に強い日も入らないから。
日向で水出しにするのはいいのだが、驚くのはその後だ。
それは砂糖の量。ハーフガロン(2リットル弱)の水に対して、約1.5パウンド(約700g)の砂糖をざーっとじょうごで流し込むのである!!
夫の作るサンティーは、悪いがとても飲めたものじゃない。歯が融けそうになる。
「そんな砂糖の量使ってたら、健康に良くないよ。甘すぎるって思わないの?」と聞くと、「ママから教えてもらった分量通りだ」とこともなげに言う。
買い物のたびに、砂糖の袋を買う。こちらの袋は標準サイズで5パウンド(2.27kg)ある。
それがどんどん無くなる。私だったら、1年かかって使う量を、1~2週間で使い切る。
いくらママのレシピだろうが、健康に良くない事は明らかだ。肉体労働してるわけじゃないんだし、そんな甘い飲み物を1日に何倍も飲んでどうする。
私は、夫と暮らし始めて数ヶ月後に、この毒のように甘いサンティーを止めさせた。
代わりに勧めたのは、日本の麦茶である。夫は「美味しい!」と気に入り、砂糖無しの麦茶をごくごく飲むようになった。
日本では、アイスティーは無糖のまま冷やしていた。家族であっても、無糖、加糖、砂糖の量だって人それぞれ違うからだ。
だが黒人家庭では、既に決められた砂糖の量の甘ーーーいアイスティーが冷蔵庫に入っているのである。甘さは、作る人によって勝手に決められてしまう。
義理ママの作るアイスティーは、非常に甘い。カルピスの原液をコップ半分くらい入れて薄めて作ったカルピスくらい、甘い。
最初の頃、無糖を想像してゴクンと飲んだ私は、吐き出してしまった。それ以降、義理ママのアイスティーは、内緒で水で薄めて飲むようになった。
義理ママのアイスティーだけが異常に甘いのかというとそれも違う。
黒人地域の黒人客しか居ないようなレストランで出て来るアイスティー、これも吐き出す程甘い。わざわざオーダーしたのに飲めずに無駄にした経験以来、私はソウルフードの店や黒人レストランに行った時は、水を飲むようにしている。
夫は子供の頃、哺乳瓶に入れられた砂糖水を飲まされていたという。まだ歯も生えない子供に、砂糖を大量に入れた水なんて!
これもブラックカルチャーなのだ。
南部のアイスティーがすごく甘いのと同じで、彼らは水にも砂糖を入れて飲むらしい。義理ママはシカゴ生まれであるが、彼女の両親は南部出身なので、その「郷土文化」を引きずっている。
黒人家庭を舞台にしたテレビドラマ、「Everybody hates Chris」というのがあった。
このシットカムは多少大げさに黒人家庭をおもしろおかしく描いているものの、黒人家庭にありがちなエピソードをポイント鋭くついて描写しており、毎回大笑いして観ていた。
80年代のNY、ブルックリン。シーンはディナーテーブル。10歳くらいの男の子が、ガラスコップに入った水に、何食わぬ顔で1杯、2杯、3杯、4杯とスプーン山盛りの砂糖を入れるのだ。
それ見て笑った。どこかで聞いた話がそのまんま(笑) NYとシカゴ、場所は変われど、こういうブラックカルチャーは同じ。
しかし昔は、子供は夏の暑い日でも、外でかけずり回って遊んでいたのだ。家の中のクーラーの中で、1日過ごす子供なんて居なかったのだ。クーラーが入っている家だって少なかったし、家の中だって夏は汗だくになるほど暑かったのだ。だとしたら、あの砂糖の量は分かる。流れる汗の量を考えると、甘いアイスティーを飲んでも、彼らが太っていなかったのも頷ける。
だが今は。。。。生活習慣がすっかり変ってしまったのに、飲み物に入れる砂糖の量だけは変らない。。。
アメリカの料理の砂糖の量は日本のそれと比較すると驚く程多いのであるが、アメリカの中でも黒人の味付け、好みの味はさらに甘いと言ってよい。
義理従兄弟の奥さんがケニア人で、彼女もアフリカの紅茶文化で育って来た。
彼女も、「このサザンスタイルスウィートティーは、喉が焼ける」と言って一切手をつけない。
ファミリーの中でアイスティーの甘さに関して異議を唱える人は、私と彼女だけ。。。そう、外国人の2人だけ。
彼女は「不健康この上ない」「美容面から」という理由で、パーティに出るフライドチキンにも、フライドキャットフィシュにも一切手をつけない。アメリカの揚げ物は、食べると気持ち悪くなるそうだ。
彼女も正真正銘のブラックではあるが、ソウルフードはアフリカンではなくて、本当にアメリカンブラックカルチャーなのである。