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シカゴからダイレクトにお届けする、知られざる黒人文化あれこれ。

Category: 知られざるブラックカルチャー
いじめの原因
日本でも小中学校のいじめの問題が絶えないが、アメリカでもそれは同じ。
いじめの原因はアメリカでは人種問題も加わり、◯◯人だからいじめられるとか、人と違う容姿だと目立つがゆえに対象になったりする。
ゲイの高校生がリンチに遭うとか、人とちょっと変わっている生徒は、いじめる側にすれば的にしやすい。。。という点においては、どこの世界でも同じかもしれない。

ところで、黒人の多い(あるいは100%黒人の)小中学校で一番のいじめの対象は、勉強のできる子である。頭のいい子、成績のいい子がいじめられる。
頭のいい子がモテるのなら分かるが、黒人の子供たちの価値観では「頭の悪い子がカッコいい(クール)」のだ。
私の小中学校時代、モテて人気のある男の子というのは、スポーツが出来て勉強が出来て面白い子、であった。
いわゆる運動だけが出来て勉強はダメな子(スポーツ馬鹿と呼ばれていた)は論外だったし、勉強だけで運動音痴な頭でっかちタイプもモテなかった。そして勉強のできる子がいじめられるという事は全くなく、どちらかというと頭のいい子は人より大人びているのでリーダーシップを取っていた。

夫は東部のプレップスクールに通う前は、シカゴの公立の小中学校に通っていた。学校や地域でもトップの成績のいい生徒であったが、いじめの対象にならなかったのはスポーツがよく出来たから。
もし運動音痴の子だったら、「毎日ロッカーに閉じ込められてただろうな」と夫は振り返る。
黒人(子供)社会において、スポーツが出来るという事はヒーローなのである。例え頭が空っぽで、勉強も大嫌いで、他の成績がオールDだとしても、行く高校が無かったとしても、スターになれてしまう。

アメリカは学歴社会である。
しかし、頭のいい子が褒められ、いい学校に行く事が名誉で。。。というのは白人の価値観で、多くの黒人にはそういう価値観が無い。残念ながら、教育が大切だという事に気づいている黒人というのは実に少数派だから。
黒人の子は頭がいいと、学校で「White」と友達に呼ばれる。
夫はいじめられはしなかったが、「どうしてそんなにWhiteになりたいの?」とさんざん言われたらしい。勉強するのは、白人になりたいからではなく、物を知りたいからなのに。物を知る事が面白いからなのに。
残念ながらほとんどの黒人の子供たちにとっては「勉強する=白人になる」という図式なのである。あああ。。。なんという現実。夫は幼少の頃から、この黒人子供社会の実態に辟易していたのだ。夫に限らず、頭のいい黒人の子供たちは、小さい頃に必ず「白人」と呼ばれた経験があろう。

知り合いのシカゴの大学生で、教育実習中の学生が居る。
彼が黒人地域の小学校に教えに行ったら、ある1人の黒人の男子生徒が質問に対して「分からない。だって僕はブラックだもん」と平然と答えたらしい。
「ブラックだから分からない」って。。。。。同じ黒人である彼は、それを聞いて嘆いていた。
黒人だからバカである。黒人だからバカでいい。バカのままでいいから勉強しなくていい。勉強出来ないのは黒人だからだ、自分のせいじゃない。黒人というのは本来バカだから仕方ないのである。。。。。本気でこう信じている黒人の子供が多いのだ。
頭のいい黒人の子供が居ると、「だって彼は”White”だから」と例外視される。あるいはからかわれ、いじめられる。

頭のいい子はいじめられるので、わざと頭の悪いフリをする事が多いのも、黒人学校におけるシリアスな問題点の一つ。
勉強が出来てしまうと友達が出来ない。女の子にモテない。いじめられる。。。いい事無しなのだ。「クール」で居るために、テストの点をわざと取らない、白紙で出す。勉強しない。宿題を無視する。物を分からないフリをする。こういう生徒が本当に多くて困る、と教員の友人は言っている。

この価値観はどこから来たかというと、NBA(バスケットボール)の選手たちと、MTVの黒人ラッパーたちの言動からの影響だ、と説明する黒人も多い。
NBAの選手たちは一部を抜かして、ストリート上がりやプロジェクト育ちの貧困層出身者が多い。一歩間違えば、ドラッグディーラーや大きな体を活かしてギャングになっていただろうプレイヤーたちも目立つ。その生い立ちを隠さない事は別にいい。ただ、彼らの言動は子供たちに間違って理解される。
どんなに貧乏でも、バスケットボールで大金持ちになれるよ。勉強なんか出来なくても、しなくても、ストリートでバスケットしていればスカウトされるよ。ボールで遊んでいれば、僕らみたいな億万長者になって、綺麗なモデルの奥さん見つけて、大豪邸をいくつも買って、車を何台も買えるよ。どんなに家が貧乏でも、プロの選手になればママに大きな家もプレゼント出来るよ。。。。。。

子供というのは、都合のよい所だけ耳を傾けるのだ。そして本当にそういうアメリカンドリームが自分にも起こるかもしれない。。。。などと夢見るのだ。
勉強などしてもたかがしれている。彼ら(NBA選手たち)は勉強しないで大金持ちになった。僕も彼らみたいになりたい。
大きな影響力を持つ選手たちが、ちゃんとした話し方をしない。きちんとした服を着ない。全身タトゥーなのである。黒人の子供たちが一番尊敬して見ているのは、彼らなのである。その「彼ら」が、勉強の大切さなんて一言も話さない。
マイケル・ジョーダン引退後は、「選手面だけでなく、人間面でも子供たちが尊敬出来る人物が居なくて残念」と、教育熱心な黒人の父兄らは嘆く。

そしてMTVに出て来る黒人ラッパーたち。
才能のある人たちも沢山居るが、耳を疑いたくなるような歌詞を連呼するだけのグループも居る。表現の自由は認めるので、誰が何を歌おうがいいのであるが、子供たちへの影響を考えると恐ろしい。彼らも、「貧乏育ちだけど、ラップして大金持ちになったよ」「クールな男は女にモテるぜ」系のメッセンジャーなのだ。そこには、努力だとか勉強だとかという欠片は一切ない。
頭が悪くて(=クール)、女にモテて、派手な服装して、ブリンブリン(首からのヒカリモノ)をつけて、改造車に乗って、卑猥な歌詞を連呼してればお金が入るよ。。。みたいなPV。

実際に、NBAでもラッパーの世界でも、成功者たちは何らかの努力は人並み以上にしているはずなのである。その前に才能が無いといけないが。だけれど、彼らから伝わって来るものは、巨万の金の部分が大きくて、単純な子供たちはその部分だけに目が行くのだ。
お金持ちになるのはいいのだけれど、得たお金や物を分かりやすくひけらかす点は、黒人文化と言ってよい。
アメリカには他にも大金持ちは沢山居るのであるが、黒人NBA選手とラッパーたちというのは、メディアの露出度とイメージとプライバシーの公開などで、黒人の子供たちにとってはものすごく分かりやすいアメリカンドリーム像となってしまっている。この責任は大きいと、私は感じるのであるが。

さて、いじめられたり悪口を言われたりする才能のある黒人の子供たちは、バカのフリをするか、いじめっ子を無視するかのどちらかの選択を迫られる。
チャンスがあってコミュニティを抜け出せた者は幸いである。コミュニティを抜け出す事すら怖くて、バカのフリをしているうちに本当にバカになり、負け犬となる黒人層がほとんどだから。そして自ら稼ぐ事もせず、その術も学ばず、生活保護に頼りながらそのまま人生を終わらせる。勉強のチャンスがあったにも関わらず、しなかった自分のせいではなく、全て社会のせいにして。

元国防長官のコンドリーザ・ライス氏は才女で有名である。教育熱心な両親に「不公平な体制に打ち勝つためには、黒人は少なくとも白人の2倍優秀でなくてはいけない」と教えられて育った。彼女の時代に、黒人であり女性である彼女が、あの地位を得るためには、2倍どころの努力ではなかったと思う。
彼女も「ホワイトハウスの白人たちの奴隷」とか、黒人たちに勝手な事をさんざん言われ続けた。黒人で頭が良いと、何をしてもなんだかんだ言われる運命なのである。大人になっても政治家になっても。周囲の中傷を耳に入れず、我が道を突き進んで来た者たちにとっては、そういう事を言う人たちは哀れにしか見えないと思うけれど。
元長官の現役時代のポリシー云々には辟易する事も多いが、彼女が積み上げて来た努力に対しては誰も何も言えないはずだ。

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Category: 知られざるブラックカルチャー
Shugga Shugga Shugga
夫と暮らし始めた頃、アイスティーの作り方でも文化の違いを感じた。

彼はガラスの空き瓶に水を入れ、その中にティーバッグをいくつか入れる。そして夏場は、それを日向に数時間置いておくのである。確かに水出しでも、紅茶の色はどんどん出る。
それを「サンティー(sun tea)」と呼ぶ。南部文化から来ているらしい。
サンティーを作れるのは、シカゴでは夏場だけ。冬は日照時間も短いし、家の中に強い日も入らないから。

日向で水出しにするのはいいのだが、驚くのはその後だ。
それは砂糖の量。ハーフガロン(2リットル弱)の水に対して、約1.5パウンド(約700g)の砂糖をざーっとじょうごで流し込むのである!!

夫の作るサンティーは、悪いがとても飲めたものじゃない。歯が融けそうになる。
「そんな砂糖の量使ってたら、健康に良くないよ。甘すぎるって思わないの?」と聞くと、「ママから教えてもらった分量通りだ」とこともなげに言う。
買い物のたびに、砂糖の袋を買う。こちらの袋は標準サイズで5パウンド(2.27kg)ある。
それがどんどん無くなる。私だったら、1年かかって使う量を、1~2週間で使い切る。

いくらママのレシピだろうが、健康に良くない事は明らかだ。肉体労働してるわけじゃないんだし、そんな甘い飲み物を1日に何倍も飲んでどうする。
私は、夫と暮らし始めて数ヶ月後に、この毒のように甘いサンティーを止めさせた。
代わりに勧めたのは、日本の麦茶である。夫は「美味しい!」と気に入り、砂糖無しの麦茶をごくごく飲むようになった。

日本では、アイスティーは無糖のまま冷やしていた。家族であっても、無糖、加糖、砂糖の量だって人それぞれ違うからだ。
だが黒人家庭では、既に決められた砂糖の量の甘ーーーいアイスティーが冷蔵庫に入っているのである。甘さは、作る人によって勝手に決められてしまう。
義理ママの作るアイスティーは、非常に甘い。カルピスの原液をコップ半分くらい入れて薄めて作ったカルピスくらい、甘い。
最初の頃、無糖を想像してゴクンと飲んだ私は、吐き出してしまった。それ以降、義理ママのアイスティーは、内緒で水で薄めて飲むようになった。

義理ママのアイスティーだけが異常に甘いのかというとそれも違う。
黒人地域の黒人客しか居ないようなレストランで出て来るアイスティー、これも吐き出す程甘い。わざわざオーダーしたのに飲めずに無駄にした経験以来、私はソウルフードの店や黒人レストランに行った時は、水を飲むようにしている。

夫は子供の頃、哺乳瓶に入れられた砂糖水を飲まされていたという。まだ歯も生えない子供に、砂糖を大量に入れた水なんて! 
これもブラックカルチャーなのだ。
南部のアイスティーがすごく甘いのと同じで、彼らは水にも砂糖を入れて飲むらしい。義理ママはシカゴ生まれであるが、彼女の両親は南部出身なので、その「郷土文化」を引きずっている。

黒人家庭を舞台にしたテレビドラマ、「Everybody hates Chris」というのがあった。
このシットカムは多少大げさに黒人家庭をおもしろおかしく描いているものの、黒人家庭にありがちなエピソードをポイント鋭くついて描写しており、毎回大笑いして観ていた。
80年代のNY、ブルックリン。シーンはディナーテーブル。10歳くらいの男の子が、ガラスコップに入った水に、何食わぬ顔で1杯、2杯、3杯、4杯とスプーン山盛りの砂糖を入れるのだ。
それ見て笑った。どこかで聞いた話がそのまんま(笑) NYとシカゴ、場所は変われど、こういうブラックカルチャーは同じ。

しかし昔は、子供は夏の暑い日でも、外でかけずり回って遊んでいたのだ。家の中のクーラーの中で、1日過ごす子供なんて居なかったのだ。クーラーが入っている家だって少なかったし、家の中だって夏は汗だくになるほど暑かったのだ。だとしたら、あの砂糖の量は分かる。流れる汗の量を考えると、甘いアイスティーを飲んでも、彼らが太っていなかったのも頷ける。
だが今は。。。。生活習慣がすっかり変ってしまったのに、飲み物に入れる砂糖の量だけは変らない。。。
アメリカの料理の砂糖の量は日本のそれと比較すると驚く程多いのであるが、アメリカの中でも黒人の味付け、好みの味はさらに甘いと言ってよい。

義理従兄弟の奥さんがケニア人で、彼女もアフリカの紅茶文化で育って来た。
彼女も、「このサザンスタイルスウィートティーは、喉が焼ける」と言って一切手をつけない。
ファミリーの中でアイスティーの甘さに関して異議を唱える人は、私と彼女だけ。。。そう、外国人の2人だけ。
彼女は「不健康この上ない」「美容面から」という理由で、パーティに出るフライドチキンにも、フライドキャットフィシュにも一切手をつけない。アメリカの揚げ物は、食べると気持ち悪くなるそうだ。
彼女も正真正銘のブラックではあるが、ソウルフードはアフリカンではなくて、本当にアメリカンブラックカルチャーなのである。

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Mami Takayama

Author:Mami Takayama
シカゴ在住のフォトグラファー&ライター。フォトグラファー的目線でブラックカルチャーを綴ります。

このブログを元に書籍化されたものが、「ブラック・カルチャー観察日記 黒人と家族になってわかったこと」となって2011年11月18日発売されます! 発行元はスペースシャワーネットワーク。
ブログの記事に大幅加筆修正、書き下ろしを加えております。いい本に仕上がりました。乞うご期待!

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